五つ紋の黒留袖でございます。 通常アンティークの黒留袖には左右対称の江戸褄模様が 描かれておりますが、 こちらは大変に貴重な下前（右側裏）のみの裾模様になっております。 以前購入した際に店主の方にお聞きしましたら、 今までこのような裾模様は出会ったことがなく どのようなシーンで着用するのか、どのような意味合いなのか 分からないと言っておられました。 また店主の方は鬼ちりと言っておられましたが 鬼ちりよりはやや小さめのしぼに感じ、 重さもどっしりさはないようでございます。 アンティークの着物関する本では、貴重でなかなか出会うことができない下前のみの裾模様の黒留袖、幕末明治初期の頃のお品物として 紹介されておりました。（ご参考までとお考え下さいませ） 黒留袖の裾には鶴や松原そして雪の結晶が 繊細に情緒豊かに描かれております。 右裾は着用する際には隠れる箇所でございますが、 絵画のように美しい様でございます。 また裾はふき綿仕立てとなり、豪華で美しい佇まいでございます。 黒留袖に置かれました五つの家紋は アンティークのお着物を確かとする30mmと大きく、 絵柄の控えめな様子や家紋の大きさからも 140年以上前の明治時代前後のお品物かと思います。 （あくまでも主観であり正確ではございません） 写真最後のボタン付けされた糸の素材が金属のような糸で 珍しいです。 このように黒留袖の30mmと大きな家紋（家紋の名は不明）に シボの美しい正絹生地の質感、そして簡素で控えめな絵柄は まさに時代背景による着物の絵柄の変遷を見るようでもございます。 眺めてはその時代の情景を想像し想いをはせる とても貴重で美しいお品物でございます。 状態は表裏共に大きく目立つ傷は見受けられませんが 写真18.19番でお分かりのように 色さめや抱きじみや些細なお色変わりの箇所がございます。 しかしながらアンティークのお品物としては 概ね良い状態かと思います。 他にも気づかぬ難があるかもしれません。 大切に令和の時代にまで残されておりましたお着物でございます。 どうぞ長い時を経たお品物とご理解頂きご了承下さいませ。 サイズ 身丈152 裄丈63 袖丈47　 袖幅32 衽14 前幅24 後幅29.5 誤差はお許しください どうぞよろしくお願いいたします。